

タブレット端末で読める「電子版図解マニュアル」
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ここからの数セクションでは、文書スタイルを基盤としかつタブレット端末の小さな画面で“読める”電子版図解マニュアル
の考え方・作り方を論じます。
電子書籍端末あるいは文書閲覧端末としてのタブレット端末の登場には、印刷物ではなしえない「文書の新たな可能性」が開けたとともに「紙に記された文書を“読む”」が「PCの操作によってPCの画面で読む」を経て「書籍に近い大きさ・重さの端末を書籍と同様な位置関係・扱い方で“読む”」に回帰した一面があります。この事実は、印刷文書から電子文書へ媒体は変わっても、「人にとって読みやすい文書形態」の本質は変わらない証とも言えます。
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表示域から見た印刷文書とタブレット端末
電子文書は「PCで読む」から「タブレット端末(あるいは電子書籍端末)で読む」によって携帯性をはじめとした利便性が高まります。ただし、一般的なPCよりもさらに画面サイズが制限されることを念頭に置かなければなりません。また、印刷文書のA4判見開きと比べると、1/4程度の表示領域にすぎません。
「画面が小さい」は、執筆者にとっては「表現に制約を受ける」、読者にとっては「全体を見通しづらい」に通じます。
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マニュアルを含め実務文書では、「読んでいる箇所(部分)がセクション(全体)の中でどのような位置付けにあるいのか」あるいは「部分と部分がどのような関係にあるのか」が重要です。
この点で印刷文書は2ページの見開きで全体を見通せ、いくつかの箇所を比較あるいは行きつ戻りつして読めます。電子マニュアルでも、見開きの便利さまでは求めなくとも画面の小ささを補う工夫が必要です。
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小説は部分に着目して読みます。全体は読者の「イメージ」として少しずつ構築されて行きます。また、新聞の記事もマニュアルの1セクションに比べ長くはありません。また、記事それぞれが独立性を有しています。

タブレット端末で読めるマニュアルを作成するには、
「文書作成の基本(見出し構成、ページの書式)」に立ち返るとともに「電子媒体ならではの機能」によって小さな画面での読みやすさと扱いやすさを実現する必要があります。
「文書スタイルを基盤にした電子版図解マニュアル」のポイント
タブレット端末の小さな画面で「基本事項(操作の指示)」と「付随的重要事項(操作の必要性・有効性あるいは条件など)」を関係付けて表すには、「図解マニュアル」とするのが適切です。

図解化のポイント1:段落の要素化
図解の文書では、セクションを構成する段落を書式によって要素化(段落全体をセクションを構成する要素とするとともに段落を構成する文も要素化)します。単に段落を連ねるのではなく、それぞれの位置付けに応じた書式で表します。段落の要素化により、タブレット端末の画面であっても読者は“見ただけで”それぞれの位置付けを見分けられます。
図解化のポイント2:ページの調整
図解マニュアルでは、ページの末尾を調整するのが原則です。「段落の途中でページ末となり次のページに続く(例:指示文と注意が別のページになる)」あるいは「段落とこれに対応すべき図が次のページに送られる」ことはありません。
図解化のポイント3:「読む」と「見る」の相乗
図解化による読むと見るの相互補完は、「読むに伴う負担の一部を見るに分散」とも言えます。執筆者にとっては、「文(あるいは図・表)だけで表そうとすると過大になりうる負担の一部を図・表(あるいは文)」への振り分けにもなります。
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