PCに比べ画面が狭いタブレット端末で閲覧する電子マニュアルの場合、不要に見出しを細分せず見出しランクを2階層(章−節)に抑えるのが適当です。見出しを細分すると、「目次が複雑になり、必要な項目を見つけづらい」あるいは「セクションが長くなり、理解に負担がかかりやすい」などの弊害を生じます。 |
見出しの細分(階層化)を避けることにより、利用者は1ないし2操作で必要なセクションにたどりつけます(言い換えれば「アクセスルート」が短くなります)。
必要以上の階層化は文書構成が複雑になるため印刷文書でも避けるべきですが、 50ページ以上の印刷物で提供されるマニュアルでは3段階(章-節-項)もしくはこれにさらに1段階が加わった階層的な見出し構成を用いる場合があります。
ただし、印刷文書の場合は見開きによって広い表示域を視野に入れられるため、見出しが細分されてもその関係を把握することはさほど困難ではありません。対して、狭い画面で閲覧する電子文書で見出しを細分すると、必要な情報をページ送り(あるいはスクロール)を繰り返して探さなければなりません。
見出しランクを2階層に抑えるには、節見出しの下位に並列な項見出しを置かず、「項見出しの解説が長い場合は、それぞれを節見出しにする」あるいは「項見出しの解説が短い場合は、表形式で表す」手法が有効です。
2階層では、機能の構成あるいはさまざまなケース事例を体系的に表せないと思われるかもしれませんが、いわゆる「図解パソコン参考書」の多くは上記の手法を取り入れた2階層の構成が基本です。
「電子文書ならばキーワード検索を使えるではないか」とのご指摘もあるかもしれません。ただ、電子マニュアルでの検索機能は印刷文書の用語索引の位置付けにとどめ、目次の代替とはしないのが適当と言えます。むしろ、検索機能に依存しない「見出し名と見出しの関係が“見えざるガイド”となって利用者を適切に誘導する見出し構成」が求められます。
検索ワードと検索結果が1対1(多くとも1対3件程度)に対応するほどの精度ならば、検索機能も有効かもしれません。しかし、いくつもの検索結果(場合によっては重複あるいは回答とならない結果を含む)から読者が選らばなければならないのではかえってわずらわしさにつながります。
また、「検索ワードを入力」し「いくつかの検索結果から選択」しさらに「別の画面に視線を移動」しまた「元の画面に戻る」必要があります。検索結果が思わしくなければ検索ワードを考え直さなければなりません。ときには、利用者が検索ワード自体を知らない可能性もあります。
前項で述べたように、セクション内(章−節構成では節ランクに相当)では見出しを細分しないのが適当です。前項で述べた手法に加え「セクションの概要あるいは手順に先立つ条件・注意は見出しに続く導入段落の扱い」とすると見出しを細分せずにすみます。
手順に先立つ条件・注意を導入段落にすれば、手順主体の明解な構成になります。手順の途中の注意事項も手順に組み込むか「手順番号を付けた確認指示」もしくは「手順の1項目分を使った注意指示」とすれば見落としがありません。
1セクションが複数ページで構成される場合、ページの関係性(セクションの最初-途中-最後)を明確にする必要があります。セクションの見出し(先頭ページ)を強調し、以降のページは見出しをヘッダ(余白への補足的な見出しの表記)扱いとするのが適当です。
手順の最後はあるいは「手順終了」と表記するか「太いけい線」で締めるのが適当です。
また、「手順が終了した後に注意事項(あるいは参考事項、参照先)を入れる」あるいは「手順の後に参考事項を列挙して当該の項目と参照番号で関連付ける」と見落とされるおそれがあります。導入段落あるいは手順の一部に組み入れるのが適当です。
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