箇条書きは、「語」あるいは「文章」の関係を構造的に表すのに有効な手法であり、マニュアルでもよく用いられます。ただし、位置付けを曖昧にした箇条書きを使うと、かえって要点が不明確になるおそれがあります。 |
箇条書きは、「複数の補足文(または補足文を要約した語)を改行によってその関係(並列性あるいは順序性)を構造的・視覚的に表す手法」とも言えます。
したがって、「補足文を箇条書きにする」 が本来の主旨であり、「要点を箇条書きにする」はやや誤解につながる発想とも言えます。
箇条書きは、まず主文(要点)があってその補足要素として位置付けるのが適当です。
しばしば「(要点を)以下に示す」などとだけ述べ、その後に数項目で構成された箇条書きが示されている場合があります。「要点が複数のあるのか」あるいは「複数あるのならばその関係性は何か」、「それこそ執筆者が言及すべき要点ではないのか」と疑問をもちます。
この際に執筆者が意図した「要点を箇条書きで示す」とは、「これまで述べたいくつかの事項を分類・要約して示す」の意と受け取るのが適切かもしれません。しかし、ただ「要点を以下に示す」とされては、読む側の疑問につながります。
その先に“本来の要点”が示されるべきにもかかわらず、項目が列挙されているだけでは読者は逆に「要点は何」と尋ねてきます。箇条書きの本来の位置付けを誤ると、要点を示したつもりでも要点を示していない矛盾になりかねません。
対して、段落中に箇条書きの構造(並列性もしくは順序性)があるにもかかわらず文章を連ねている例を見かけます。箇条書きにすれば読みやすくなるのは言うまでもありませんし、読者にとっては補足文の関係を「見て理解」できかつ個々の項目を「読んで理解」できます。
言わば、箇条書きは段落の「構造」化あるいは「視覚」化です。以降のセクションで述べる表も同様です。図解は、箇条書きあるいは表の延長線上にあると言えます。
前述のように箇条書きの各項目は、「並列性もしくは順序性のある補足文」です。したがって、「箇条書きに見出しを付ける」あるいは「 箇条書きの項目を見出し扱いにして階層化する」使い方は不自然であり原則から逸脱します。また、「見出しが付いた箇条書き」あるいは「階層化された箇条書き」は、「文書を構成する見出し構成(章−節−項)」もしくは「表(行と列)」との整合性を欠きます。
また、箇条書きを簡略化の手法ととらえ、見出しに続けて項目を列挙している例もよくあります。その結果、各章見出しに対する要点がなく、メモと大差がない“列挙の集合”のような事例も見かけます。
限られた部署内の習慣として扱うならばさほど問題とはしませんが、ユーザの手に渡る文書でローカルな習慣に陥っているとすれば問題と言えます。
不要に箇条書きを見出しの代替とせず、適切な見出しと主文、箇条書きで構成するのが適当です。あるいは、見出し構成の一部にならない場合は表(見出しに相当する項目を表の第1列にする)にする手法もあります。
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