執筆の知識
用字用語の選び方と用例


ひらがな書きが適当な語」の例−副詞、接続詞を中心にして−

   

技術文書を表す際に使用頻度が高い語があります。これらを「ひらがな書きが適当な語」と「漢字書きが適当な語」に分けて一覧にしておけば迷った際に便利です。また、慣れるといつのまにか覚えてしまいます。

 掲載した事例に関する付帯事項

  • 当セクションで取り上げた用例は、技術文書をはじめとする実務文書でよく使われる表現からの抜粋です。

  • 当セクションで取り上げた 用法は、複数の用字用語辞典を参考にしています。用字用語辞典で許容(複数の表記のいずれを用いてもよい)されている場合は 、複数をそのまま掲載するあるいは各種の出版物の傾向および慣用例を勘案して筆者が判断しています。


ひらがな書きが適当な語 −副詞および副詞的に使う語−

よく使う副詞には、常用漢字表にない漢字と読みの語がいくつもあります。この理由から漢字と読みが常用漢字表にある副詞であっても多くの語はひらがな書きにするのが通例です。

ひらがな表記
漢字・かな表記
参 考
備 考
あまり
( 余りに)
あまりに多くの被害が発生した
あらかじ
(予め)
表外音訓
あらかじめ発注しておく(代替:まえもって /事前に)
あらためて
(改めて)
日時をあらためて決定する
いか
(如何に)
熟字訓
いかにして解決するかが重要となる(代替:どのように)
いず
(何れ)
表外音訓
いずれの場合も(代替:どちらの)
いたって
(至って)
いたって良好な状態にある
いっそう
(一層)
いっそう早まる
いったん
(一旦)
*(H22)
いったん 初期設定に戻す
いま
( 未だ)
表外音訓
いまだに解決しない
おおむ
(概ね)
表外音訓
おおむね良好な状態にある
おのおの
(各/各々)
おのおの意見 注:公用文では「各」と表記
きわめ
( 極めて)
きわめて困難になる
さら
( 更に)
さらに多くの被害が発生した
じか
(直に)
表外音訓
じかに届ける(代替:直接に)
しだい
(次第に)
しだいに減少した
すぐ
(直ぐに)
表外音訓
すぐに戻る
すで
(既に)
すでに解決している
すべて
(全て )
*(H22)
すべて変更する
たいへん
( 大変)
たいへん複雑な問題
たびたび
(度々)
たびたび発生する
つい
(遂に)
表外音訓
ついに終わる
とも
(共に)
両者ともに
なぜ
(何故)
表外音訓
なぜかわからない
なんら
( 何等/何ら)
*[何(なん)]

表外音訓[等(ら)]

なんら変わらない
たして
( 果たして)
はたして試験は成功した
ほとんど
(殆ど)
表外漢字
ほとんど変化がない
まず
(先ず)
表外音訓
まず、今回は(代替:最初に)
まだ
(未だ)
表外音訓
まだ始まらない
まったく
(全く)
まったく発生しない
もっとも
(最も)
もっとも負荷が少ない
わずか
(僅か)
*(H22)
わずかに異なる

 

なお、漢字書きとひらがな書きが同程度に使われている副詞もあります。常用漢字表にある語ですので漢字書きにしても差し支えありませんが、文書中での統一が基本です。

 

ひらがな表記
漢字・かな表記
参 考
備 考
とくに
特に
とくに必要としない(代替:とりわけ/とりわけて)
たとえば
例えば
たとえば、Aのような(代替:例をあげると)

 


ひらがな書きが適当な語 −接続詞および接続詞的に使う語−

漢字の語を漢字の接続詞でつなぐと読みづらいという理由から、技術文書ではひらがな書きが一般的です。ただし、公用文では常用漢字表に採録された語による接続詞は漢字書きです。

 

ひらがな表記
漢字・かな表記
参 考
備 考
あるいは
(或いは)
表外漢字
AあるいはB
あわせて
(併せて)
あわせてお願いする
および
(及び)
AおよびB
(且つ)
AかつB
したがって
(従って)
したがって、本件では
ただ
(但し)
ただし、この本件では
なお
(尚)
表外 音訓
なお、実施に際しては
ならび
(並びに)
AならびにB
また /また
(又/又は)
AまたはB
しくは
(若しくは)
AもしくはB
ゆえ
(故に)
ゆえに、この状況では
って
(因って)
よって、以下の結果となる
 
(依って)
表外 音訓
 
 
(拠って)
表外 音訓
 

 

接続詞的に使う語で漢字書きとひらがな書きが同程度の場合があります。常用漢字表にある語ですので漢字書きにしても差し支えありませんが、文書中での統一が基本です。

 

ひらがな表記
漢字・かな表記
参 考
備 考
くわえて
加えて
くわえて 、○○への対策が必要とつなる *「前言に関連して」の意 

注:「溶液に触媒を加える」は漢字書き

 


程度などの意味を添える副助詞の一部

副助詞を漢字書きにすると前後に付く漢字書きの語と連なるため、ひらがな書きにするのが通例です。

ひらがな表記
漢字・かな表記
参 考
備 考
-くらいぐらい
(位)
 「10の位」など桁を表す場合は漢字書き
-ころごろ
(頃)
 
-など
(等)
表外 音訓
 1例ないし2例を例示する際は「など」、列挙の省略の際は「等(とう)」
-まで
(迄)
表外漢字
 
-ほど
(程)
 

 


参考および引用文献

常用漢字表(平成22年11月30日)内閣告示
野村雅昭 編:「東京堂 用字用語辞典」、東京堂出版、1981
当ページの表を作成するにあたり用語選択の参考にしました。

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