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用字用語の選び方と用例


送り仮名の原則−活用のある語−

   

「活用のある語」とは、動詞・助動詞、形容詞・形容動詞など活用形によって活用語尾が変わる語です。「活用のある語は活用語尾を送る」は送り仮名の基本です。


活用語尾を送る」を基本とした通則

「送り仮名」を一言で述べると「活用語尾」です。一般に、活用のある語は「語幹」に「活用語尾」を付けて用います。「語幹」とは活用に際して変わらない部分です。対して、「活用語尾」は活用に伴って変わる部分です。

しばしば、通則のうちの「許容」が“両論併記”ともなり、送り仮名の不統一をまねく場合があります(たとえば、文書中の「行う」と「行なう」の混在)。これも「活用語尾から送る」という原則を適用すれば統一は難しくありません(「行う」、「表す」、「現れる」など)。

 通則1:「送り仮名の付け方」(内閣告示・訓令、昭和48年、昭和56年一部改正)より転載・引用

本則
活用のある語(通則2を適用する語を除く。)は活用語尾を送る。
    用例抜粋: 書、考える、濃
例外
(1)語幹が「し」で終わる形容詞は、「し」から送る。
    用例抜粋: 著しい、惜しい、珍しい
(2)活用語尾の前に「か」、「やか」、「らか」を含む形容動詞は、その音節から送る。
    用例抜粋: 細だ、穏やかだ、明らか
(3)次の語は、次のように送る。
    用例抜粋: 異る、明い、大い、小い、少い、平い、冷い、同だ、平
許容次の語は、()の中に示すように、活用語尾の前の音節から送ることができる

    用例: 表す(表す)、著す(著す)、現れる(現れる)、行う(行う)、断る(断る)、賜る(賜る)

(注意)
語幹と活用語尾との区別がつかない動詞は、たとえば、「着」、「寝」、「来」などのように送る。


“他の語を含む語”“含まれている語”による」を基本にした通則

「派生した語」は、“派生のもととなった語”の送り仮名の付け方に準じて送るのが基本です。

 通則2:「送り仮名の付け方」(内閣告示・訓令、昭和48年、昭和56年一部改正)より転載・引用

本則
活用語尾以外の部分に他の語を含む語は、含まれている語の送り仮名の付け方によって送る。
(含まれている語を〔〕に示す)
(1)動詞の活用形またはそれに準ずるものを含むもの
    用例抜粋: 
    動かす〔動く〕、向かう〔向く〕、浮かぶ〔浮く〕
    押さえる〔押す〕、及ぼす〔及ぶ〕、積もる〔積む〕、聞こえる〔聞く〕
    起こる〔起きる〕、落とす〔落ちる〕、冷やす〔冷える〕
    当たる〔当てる〕、変わる〔変える〕、集まる〔集める〕、定まる〔定める〕、連なる〔連ねる〕、交わる〔交える〕
    混ざる・混じる〔混ぜる〕
(2)形容詞・形容動詞の語幹を含むもの
    用例抜粋: 
    んずる〔重い〕、確かめる〔確かだ〕、重たい〔重い〕、細かい〔細やかだ〕、柔らかい〔柔らかだ〕
(3)名詞を含むもの
    用例抜粋: 
    んずる〔先〕、めく〔春〕、ろめたい〔後〕
例外
読み間違えるおそれのない場合は、活用語尾以外の部分について、次の()の中に示すように、送り仮名を省くことができる
    用例抜粋: 
    浮かぶ(浮ぶ)、押さえる(押える)、積もる(積る)、起こる(起る)、当たる(当る)、終わる(終る)、変わる(変る)
(注意)
次の語は、それぞれ〔〕の中に示す語を含むものと考えず、通則1によるものとする。
    用例: 明るい〔明ける〕、荒い〔荒れる〕、悔しい〔悔いる〕、恋しい〔恋う〕


参考および引用文献

送り仮名の付け方(昭和48年6月18日、昭和56年10月1日 一部改正)内閣告示・内閣訓令

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