カタカナ表記の際に「つづりの終わりの-er、-or、-arあるいは-y」に対応して語尾の音に長音記号を付けるのが原則です。これに対し、技術分野によっては長音記号を省く慣例があります。
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とりわけ、電気・電子、情報・通信および機械分野では一部の語で語尾の長音記号を省く慣例があります。物理、化学などの分野では省かないのが一般的です。
「外来語の表記」(平成3年 内閣告示第二号)では“原語(特に英語)のつづりの終わりの-er、-or、-arなどに当たる語は、原則としてア列の長音とし長音符号「ー」を用いて書き表す。ただし、慣用に応じて「ー」を省くことができる”と両論併記とも言える扱いとしています。なお、同文書ではつづりの終わりが-yに当たる語に関しては明確に示されていませんが、「エネルギー」など長音記号「ー」を付ける語例が示されています。
物理、化学などの分野では原則のとおりとし、電気・電子、情報・通信および機械分野では慣例の方針をとりました。一説には「語尾に長音記号を付けるのは冗長である」と意見が多かったのが理由とされています。
一方で、電気・電子、情報・通信および機械分野でも、一般ユーザ向けの文書では長音記号を付ける傾向もあります(例:BDレコーダー)。
原則とおりに原語のつづりの終わりが-er、-or、-arあるいは-yだからといって、トランジスター、プロセッサーでは間延びしてしまいますし、かといってバー(bar)やキー(key)がバとキでは不自然になります。
技術者の皆さんがなじんでおられるのは、トランジスタ、プロセッサだと思います。専門分野の用語の基準となる学術用語集では 長音記号「ー」を付けず、トランジスタ、プロセッサとしていますし、バー(bar)やキー(key)としています。
そこで電気・電子、情報・通信および機械分野の技術文書には、以下の「3音ルール」を提案します。すなわち3音以上の語には長音記号「ー」を付けない“慣用上の原則”です。
「3音ルール」は筆者の便宜的な造語です。3音ルールはまったく根拠 がないわけではありません。音の数で長音記号の付け方を判断する方法は出版社などでよく使われています。
本表では、拗音(ャ、ュ、ョ、ヮ)が付く語および外来音を表す際の「ディ」、「フォ」などは1音と扱います。
原語(特に英語) |
3音ルール |
例 |
つづりの終わり
が-er、-or、-ar | 3音以上は語尾の「ー」を省略する |
モニタ(monitor)、フィルタ(filter) |
2音までは語尾に「ー」を付ける |
パワー(power)、シャワー(shower) |
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2音までであっても間に長音を含む場合は語尾の 「ー」を省略する |
モータ(motor)、サーバ(server) *ユーザ、メーカなども同様の扱い方をする場合がある |
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つづりの終わり
が-y | 3音以上は語尾の「ー」を省略する |
メモリ(memory)、テクノロジ(technology) |
2音までは語尾に「ー」を付ける |
コピー(copy)、ボディー(body) *原語の表音符号では長音ではない |
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2音までであっても間に長音を含む場合は語尾の 「ー」を省略する |
プーリ(pulley) |
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定着した慣用がある場合 |
慣用に従う |
ムービー(movie)、エア/エアー(air) 、ホッパ/ホッパー(hopper) |
外来語の表記(平成3年6月28日)内閣告示・内閣訓令 |
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