執筆の知識
用字用語の選び方と用例


外来語のカタカナ表記の原則−留意が必要な仮名−

   

原音や原つづりにそのまま日本語の音を当てると、日本語の習慣にややそぐわない場合があります。その際には、日本語で発音しやすい表記を当てる場合もあります。「外来語の表記」では両論併記の立場をとっているため、実務で混乱をきたす場合もあります。企業内で統一するあるいは業界の慣例に沿うなどの対応が必要です。


カタカナ表記の原則(3) −撥音(はねる音)、促音(つまる音)、長音(のばす音)−

とりわけ、語尾に長音記号を付すべきか付さないべきかは技術文書でしばしば議論になります。「外来語の表記」では両論併記となっています。長音記号を付さないとつづりとの対応が不自然になる一方で付けると冗長な表記にもとれます。

 「外来語の表記」(平成3年 内閣告示第二号 本文 留意事項その2)より転載・引用

発音
カタカナ表記
撥音(はねる音)
」を用いて書く
マ、トラク、ラグ、メバー
注1:撥音を入れない慣用のある場合は、それによる
イニング(←インニング)、サマータイム(←サンマータイム)
注2:「シンポジウム」を「シムポジウム」と書く慣用もある
促音(つまる音)
」(小さなツ)を書き添えて示す
プ、シャター、リュクサ
注:促音を入れない慣用のある場合は、それによる
アクセサリー(←アクセッサリー)
長音(のばす音)
原則として長音記号「」を添えて示す
エネルギー、グループ、
注1:長音記号の代わりに母音字を添えて書く慣用もある
バレエ、ミイラ
注2:「エー」、「オー」と書かず、「エイ」、「オウ」と書くような慣用のある場合は、それによる
エイト、ペイント、レイアウト、スペイン、サラダボウル
注3:原語(特に英語)のつづりの終わりの-er、-or、-arなどに当たるものは、原則としてア列の長音とし長音符号「ー」を用いて書き表す。ただし、慣用に応じて「ー」を省くことができる
エレベーター、ギター、コンピューター、マフラー、エレベータ、コンピュータ

 


カタカナ表記の原則(4) ―イ列・エ列の音の次の「ア」の音―

技術文書では「ダイヤル」なのか「ダイアル」なのかがしばしば議論になります。「ヤ」は慣用とされていますから「ダイアル」に統一しても差し支えありません。

「外来語の表記」(平成3年 内閣告示第二号 本文 留意事項その2)より転載・引用

外来音
カタカナ表記
イ列・エ列の音の次の「ア」の音
原則として「」と書く
グラビ、ピノ、フェプレー
注1:「」と書く慣用のあるものは、それによる
タイ、ダイモンド、ダイ
注2:「ギリシャ」、「ペルシャ」について「ギリシア」、「ペルシア」と書く慣用もある

 


カタカナ表記の原則(5) ―つづりとカタカナ表記―

元素名は化学用語として定着しているため、表記が混乱する例はほとんどありません。

 「外来語の表記」(平成3年 内閣告示第二号 本文 留意事項その2)より転載・引用

原語の発音またはつづり
カタカナ表記
語末(特に元素名等)の-um
原則として「-(イ)ウム」と書く
アルミニウム、カルシウム、ナトリウム
注:「アルミニウム」を「アルミニューム」と書くような慣用もある
英語のつづりのXに当るもの
「クサ」、「クシ」、「クス」、「クソ」と書くか「キサ」、「キシ」、「キス」、「キソ」と書くかは、慣用に従う
タクシー、ボクシング、ワックス、エキストラ、タキシード、ミキサー

 


カタカナ表記の原則(6) ―その他―

技術文書では「欧文の分かち書き」に中点を入れる入れないの議論があります。固有名(人名など)あるい前置詞を間に含む場合以外は中点を入れないのが一般的です。

 「外来語の表記」(平成3年 内閣告示第二号 本文 留意事項その2)より転載・引用

原語の発音またはつづり
カタカナ表記
拗(よう)音に用いる「ヤ」、「ユ」、「ヨ」
「ヤ」、「ユ」、「ヨ」は子書きにする
 
「ヴァ」、「ヴィ」、「ヴェ」、「ヴォ」や「トゥ」のように組み合わせて用いる場合の「ア」、「イ」、「ウ」、「エ」、「オ」も子書きにする
 
複合語であることを示すためのつなぎの符号
それぞれの分野の慣用に従うものとして、ここでは取決めを行わない
ケース バイ ケース、ケース・バイ・ケース、ケース-バイ−ケース
マルコ・ポーロ、マルコ=ポーロ

 


参考および引用文献

外来語の表記(平成3年6月28日)内閣告示・内閣訓令

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