「してはならない行為(あるいは必ずしなければならない行為)」が何であるかを「1文1行為」で表す原則こそが注意指示のポイントにほかなりません。ところが、マニュアルの中には、原則を欠いた曖昧な事例を見かける場合があります。 |
理由に加えて「注意してください」とだけを述べ、明確な指示を述べていない例を見かけます。「製品を移動する際は、転倒のおそれがあるため十分に注意してください」と言われても、「何をしてはいけないのか」あるいは「何をしなければならないのか」が不明です。注意はされても、指示されたとは言えません。
自動車を運転中に「横風に注意」の道路標識があれば、私たちは周囲の状況から風の程度を確認するともにハンドルなどから自動車の挙動を把握しようとします。さらに必要ならば徐行します。それは運転免許を取得する際に教育を受けるとともに経験を積んでいるからです。
ところが、初めての作業の際にマニュアルでただ「注意してください」と言われても具体的に何をすればよいのかわかりません。万が一の事態に責任の所在を問われる原因にもなりかねません。
操作指示と同様に、1項目に注意指示は一つが基本です。1項目に複数の注意指示(-し、-しないでください)を述べると一方が見落とされる場合があります。あるいは、前者の「-し」が命令とも否定命令ともとれ、場合によっては反対に理解されるおそれもあります。
連続するならばそれぞれが読み落とされない工夫(例:鍵かっこ書き)をするか「1文1行為」の原則に沿って分割するのが適当です。
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