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テクニカルライティングには、「わかりやすいマニュアル」を具体化するさまざまな手法があります。同時に、これらの手法はマニュアルを作成する際に執筆者が遭遇するさまざまな課題の解決策でもあります。 |
前述のように、マニュアルのわかりやすさは主に「“見通しがよい”見出し構成」、「要点が明確な段落(手順を含む)」に加えて「視覚的・構造的な表現」、「読者の視点を主体にした文体」によって構成されます。テクニカルライティングには、これらを具体化するさまざな手法が事例とともに体系化されています。
「手法化」されていれば、初めてマニュアルを作成される方にも簡単に応用できます。いかなる「能力」あるいは「技術」も、手法化されず“個人にとどまった 能力”あるいは“原理が説明されず、見て取り入れるしかない技術”では的確な応用につながりません。
“見通しがよい”見出し構成につながる手法の一つとして、ここでは「直列構成と並列構成の組合せ」を取り上げます。
同じ見出しランクの見出しの構成には、「直列(順序性がある)」構成と「並列(独立性がある)」構成の二通りがあります。いずれも厳密な分類ではなく、見出し間の関係性と理解してください。
「直列」構成とは、それぞれに順序性があり、先の項目を読まなければ次の項目に進めない構成です。対して、「並列」構成には強い順序性はなく、それぞれ個別の読んでも差し支えない構成です。
マニュアルに限らず文書の見出し構成を検討する際には、「直列」構成、「並列」構成に加えて、両方を組み合わせた構成を使い分けるのがポイントです。
「直列」構成と「並列」構成を組み合わせるなど変則的ではと思われるかもしれませんが、実用的な文書ではしばしば用いられる合理的な手法です。
たとえば、パソコンの図解参考書をご覧になると、章の最初に総論的な「節(セクション)」があり、それに続けて各種の操作方法が同じ見出しランクで並列に連なった構成になっています。
「第1節 概要(総論)」→「第2節 各種の操作」の直列的な構成にすると、「第2節 各種の操作」の下位に項見出しとして“各種”の操作が並列に構成される結果になります。
その結果、「概要」の節が2ページ程度に対し、「操作」の節が数十ページになる場合があります。また、読者にとって「知りたい事項」である操作方法が下位となり、“見通しが悪い(下位の見出しから探さなければならない)”見出し構成になります。
加えて、「操作」の節が「各種の操作方法があります」あるいは「各種の操作方法を示します」程度のさほど“意味がない”節に陥る場合があります。
場合によっては、読者にとって「知りたい事項」が目次に採録されないなど、変則的な見出し構成の原因にもなります。
「直列」構成と「並列」構成を組み合わせて項見出しを節見出しに繰り上げると、読者にとって「知りたい事項」である操作方法が上位となり、“見通しがよい (上位の見出しで見つかる)”見出し構成になります。
第1節でそれぞれの操作の関係を図解で示すと、よりわかりやすくなります。また、サブタイトルを用いて見出し名で見出しの関係を補足するのも効果的です。
テクニカルライティングには、上記以外に複雑な見出し構成をわかりやすくするさまざまな手法があります。また、文章・段落をまとめるあるいは図解化する際に有効な手法もあります。
「わかりやすい」とされる文書には、これらの手法が効果的に使われています。「手法」は、ある意味で「マジック(手品)」と同じです。“種(原理)”を明かしてしまえば、簡単に使えます。テクニカルライティングは、職業ライターの「技」ではありません。
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