テクニカルライティングの応用
電子マニュアルの考え方とタブレット端末で読める電子版図解マニュアルの作り方

電子版図解マニュアルの作成ツールファイル形式の選び方

   

電子マニュアルだからといって専用の作成ツール(ソフトウェア)とファイル形式をイメージする必要はありません。文書スタイルの電子マニュアルならば、ワープロソフトあるいはプレゼンソフトなどいわゆる「Officeソフト」を活用できます。タブレット端末に合わせたページレイアウトと書式で図解マニュアルを作成したら、それが“正確に変換”されるファイル形式を選ぶだけです。


「電子版図解マニュアル」に適した作成ツール

ワープロソフトとプレゼンソフトではその用途が異なりますが、見方を変えればともに「固定ページ型」の文書を作成するための身近なツールと言えます。

電子版図解マニュアルの作成ツールとして見た際、ワープロソフトには見出し構成(アウトラインプロセッサ機能)の検討がしやすいとともにページの調整が簡単な利点があります。1セクションが複数ページで構成される場合、セクションの最初のページと以降のページの関係が自動的に構成されるとともに執筆者が望む位置で改ページが可能です。加えて、書式の設定をスタイル化して効率よく文書を作成できます。

プレゼンソフトも選択肢の一つです。プレゼンソフトは階層的(章−節−項)な見出し構成を有する文書の作成には適しませんし、またプレゼン資料を作成する際にはそのような用い方をすべきではありません。ただ、見出しの階層構成を2ランクにとどめるとともに章見出しを中扉の扱いとすれば、電子マニュアルにも応用できます。


「電子版図解マニュアル」に適したファイル形式

執筆者が意図するレイアウトをタブレット端末(あるいはPC)上で再現できる「固定ページ型」の電子文書を作成する際のファイル形式には、PDF(Adobe Acrobat)形式が第一の選択肢と言えます。

ファイル形式

電子マニュアルの要件から見た電子文書のファイル形式(2011年1月現在)

汎用およびビジネス用途を指向したファイル形式

主に電子出版(電子書籍など)を指向したファイル形式

PDF

XPS

HTML

提供事業者による独自形式

オープン形式(EPUBなど)

ページ形態

固定ページ

固定ページ

可変ページ(リフロー)
(拡張的に固定ページ)

可変ページ(リフロー)/固定ページ

可変ページ(リフロー)⇒
可変ページ(リフロー)/固定ページ

スタイルの指向性

文書スタイル
(拡張的にマルチコンテンツ)

文書スタイル

書式付テキスト/
マルチコンテンツ

文書スタイル/マルチコンテンツ

文書スタイル/マルチコンテンツ

閲覧ツール

Acrobatリーダ

Webブラウザ

Webブラウザ

規格に準拠したリーダ

規格に準拠したリーダ

基本の閲覧形態

ページ送り

ページ送り

スクロール

ページ送り

ページ送り

普及の程度

広く普及

普及段階

広く普及

一般用途には製作環境は非提供

仕様が確立の途上

適した電子マニュアル

文書スタイルの
電子版図解マニュアル

簡略な動画マニュアル

動画を取り入れた
電子版図解マニュアル

 

「電子マニュアル=Webブラウザで読むマニュアル」としてHTML形式(いわゆるWeb形式)を候補とされるかもしれません。しかし、HTML形式は「可変ページ型」で用いるのが一般的です。セクションが長くなると縦のスクロール操作で閲覧しなければなりません。また、セクションの数だけファイルが増えます。

電子文書の普及が進めばこれに応じてワープロをはじめとしたOfficeソフトにXML形式を基盤とした汎用的な電子文書用ファイル形式(例:ビジネス用途にも応用しうる仕様のEPUB)が標準で備わると予想します。それまで「電子書籍のファイル形式論争」に巻き込まれてファイル形式選びに迷う必要はありません。


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