

テクニカルライティングの視点で文書作成を見直す意義
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再度になりますが、ここで述べる「テクニカルライティング」とは、「目的に応じた技術文書を作成するための知識と手法の体系」です。ただし、時間をかけて学んでいただく教育コースではありません。むしろ、「執筆者がこれまで知りえた文書作成に関するさまざまな習慣や知識・手法を見直す指針」とご理解ください。たとえば、箇条書きは並列性あるいは順序性がある事項を構造的に示すのに有効な手法です。しかし、前項で述べたように「読者の理解に有効」を「執筆者にとって便利」に置き換えていては意味がありません。箇条書きをはじめ文書作成の各手法が「本来、何であり、いかに使うと有効で、何に注意すべきか」をテクニカルライティングの視点で点検するのは意義があると言えます。 |
「わかりやすい/わかりづらい」の根拠を知る意義
文書(ここでは、実務文書を対象とします)を評価する際に読者がよく用いる表現が「わかりやすい/わかりづらい」あるいは「読みやすい/読みづらい」であり、以外と曖昧です。「どこが、どのように、なぜ」は具体的に教えてくれないのではないでしょうか。実は、読者も執筆者も文書の良し悪しの根拠あるいは本質をさほど考えぬままに読み書きしている一面があります。
業務上でなんらかの文書を作成しているのならば、執筆者は「わかりやすい」、「読みやすい」とは何かを具体的に知っておくべきです。執筆者も見方を変えれば読者です。本来は読者の立場になって読み返せば改善点が“見えてくる”はずですが、文書作成を体系的に理解していないと何をどのように直せばよいのか糸口がつかめないのが実情だと思います。
「書式」を見直す意義
ここでいう書式とは、「文書を構成するのに必要な様式全般(判型や文字の大きさのみならず見出しランクや本文、箇条書き、注記、図・表など)」です。「ページ数が多い/少ない」あるいは「定型/準定型」にかかわらず“理にかなった共通な規範(ここでは、考え方・ルール・例外を総じた意)”に基づいた書式を選ぶのが文書作成の原則です。
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出版社から発行されるさまざまな単行本それぞれに違いがあっても、誰もが無理なく読めかつ違和感がないのは共通の規範に沿った書式が用いられているからです。国内の論文も海外の論文も細部に違いはあっても、おおむね同じ主旨の書式なのは共通の規範に基づいているからです。
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たとえば、標準的な文書(ここでは50ページ超を想定)の見出しランクは3段階程度(せいぜい4段階)にとどめ、不要に細分しないのが原則です。見出しを表す際は、目立つように強調書体(ゴシック体など)を用い、見出しランクに応じた文字の大きさを使って見出しの上位と下位を表します。また、見出しには見出し番号を付けるのが基本です。
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上記が標準的な文書とするならば、数ページ程度の定型的な報告書ではその原則・基本に基づいた簡略形として扱われます。したがって、見出しは2ランク程度にとどめ書式で上位と下位を表します。きわめて定型的な文書では、見出し構成が常に同じとして見出し番号を省略する場合があります。
ところが、「標準形から派生した簡略形」をもとに執筆者が自己流で書式を作ってしまったら、読者には「違和感がある」あるいは「使いづらい」書式にしかなりません。「さまざまな書式の基本・原則は何であり、それにはどのような意味があるのか」を知り、さらには「文書の目的に応じて規範をいかに応用するのが適当か」を考える必要があります。

「見出し構成」の考え方を知る意義
定型的な文書では、第1ランクの見出し構成がすでに決まっています(報告書の「目的」、「結論」など)。しかし、執筆内容によっては第2ランクの見出しを執筆者が追加しなければならない場合があります。この際に「見出し番号書式」および「見出し名」の付け方の指針がないと、執筆者間でまちまちになったり読者にとってわかりづらい付け方になってしまうおそれがあります。また、執筆者によっては見出しを付けずに箇条書きを用いる場合もあります。箇条書きと見出しをどのように使い分けるのが適当なのかも課題となります。
ページ数が少ないあるいは定型的な文書を作成する機会がほとんどであっても、必要にせまられページ数が多い準定型の文書を作成する場合があります。その際、見出し構成を考える基礎がないと、実情に合わない事例を参考にしてしまい読者にとって使いづらい文書になりかねません。

「要点の位置」を知って書く意義
読者(とりわけ企業では上司)が執筆者(ここでは部下)の文書に対して不満がある場合によく用いられる語が、「要点は何?」、「具体的には?」です。その原因の一つに執筆者が陥りやすい「要点と補足を“ないまぜ(ここでは、区別すべきものを混合してしまうの意)”にした書き方」があると言えます。“ないまぜ”にした書き方にしてしまと、「要点」と「要点に関連して具体的であるべき事項」の関係が不明確になるばかりか、「不十分であったり欠落する」あるいは「さほど重要でない事項に字数をとってしまう」ことにもなりかねません。その結果が「結局、要点は何?」、「いろいろと書いてあるけど、具体的には?」です。
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執筆者は読者のためにと思い“さまざまな情報”を述べたつもりでも、読者が真に必要とする「要点」あるいは「要点の先にあるべき重要事項(「具体的には」に相当)」が不在あるいは曖昧では意味がありません。文書および文書を作成した労力が否定され、ときには書き直しという効率化とは程遠い状況になりかねません。負の連鎖とも言えます。
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「口頭で補足すればよい」と主張する執筆者もいますが、文書はそれ単独で複数の読者に要点が明確に伝わらなくて意味がありません。文書はいわゆる“独り歩き”をします。文書を手渡した相手には口頭で補足できても、文書だけが相手先の上層部に届き、そこで十分な理解を得られないあるいは誤解されてしまうおそれもあります。
先にも述べましたが「主題を位置付け、主題に対応した要点を明確に述べ、必要に応じ箇条書きや図・表で補足する」のが実務文書の基本です。すなわち、要点を見出しの直後に置けば見落とされることはありません。

「要点は?」、「具体的には?」と聞かれない構成
読者が「要点」と「具体的には」を求めているならば、段落を「要点」と「具体的には(要点の補足)」の構造にすればその要求に応えられます。 表すべき要点を知っているのは執筆者です。どのように要点を表せば読者の理解につながるかが執筆者の中で整理されていれば、ワープロに向かう前(それこそ当該の業務中)に要点がまとまってきます。文書にまとめる際は、主題(見出し)の後にその要点を述べ、
続けて把握している事実や見解を補足すればよいはずです。要点と補足の関係が“一つのリズム”になり(ワープロの手がしばらく止まってしまうこともなく)、文書作成の効率化にもつながります。
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“文が出てこない”原因はさまざまありますが、執筆者が「明確な要点」に達していないことが最大の原因と言えます。ところが、執筆者は自身で結論を明確にしないまま書き始めてしまい、考えながら文節が浮かんでくるのを待ち、書いては待ちの状況を繰り返している場合があります。
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「要点に至る事情をながながと語っている時間」、「執筆者が文節が浮かんでくるのを待っている時間」、これらが執筆に時間がかかる大きな原因と言えます。当然ですが、企業の文書作成は時間の制約を伴います。とりわけ、「迷っている時間」はおおいにむだといえます。しばしば、迷っている間に他の案件が入り、不十分なままで文書を提出しがちです。その結果、書き直しを求められても意味がありません。
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何を要点にするかを明確に定めずにいると、執筆者はとにかく「***は、」と文の主題(あるいは主語)だけワープロで入力します。そして、しばらく考えては文節を入力し、またしばらく考えては文節を入力し文を締めくくります。この「考えながら文節を続ける習慣」が、実は“主語と述語が対応しない”原因あるいは“不要に文が長くなる”原因と言えます。
要点に続けてそれを具体的に補足すれば、「具体的には?」に答えることになります。ここでいう具体的とは「結論(要点)に至る理由・経緯」だけではなく「要点の先にあるべき重要事項」の場合もあります。これら「具体的には」を示す際こそ、箇条書きや図・表が有効と言えます。

「チェックポイント」を知って書く意義
「書いた文書は見直す」のが原則です。しかし、要点が定まっていないと「要点と補足がないまぜとなった複雑な文書」になる場合が多く、見直しに時間がかかります。まして、何に注意して見直すべきか整理されていないと、見直しも不十分になりかねません。結局、時間に迫られて“完成度が低い”文書を読者に提出し、読者から不備を指摘されてしまう結果になりかねません。
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文書を作成する際の注意事項に「曖昧な表現、冗長な表現を避けるべき」などとありますが、何が曖昧であり冗長なのか具体的に知らされているでしょうか。注意する側も注意を受ける側も「何をどのように気をつけなければならないのか」を“曖昧”に理解していては文書の改善にはつながりません。
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「誤字脱字がなければ問題ない」、「内容が正しければかまわない」と主張する執筆者もいますが、小さな「読みづらさ」、「違和感」、「不統一」も積み重なると読解を阻害し、ひいては文書価値の喪失につながります。
あらかじめ、何に注意すべきなのかチェックポイントを体系的に知っておけば、見直しながら執筆できるとも言えます。チェックポイントが身に付けば、さほど意識することもなく要点を定め適切な表現を選んで書けるようになります。さらに見直せば、より“完成度が高い”文書を作成できるようになります。

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