ワープロでは、文字の大きさや行間を「ポイント(pointあるいはptとも表記)」で指定します。普段なにげなく「10.5ポイントの文字」などと使っているこの「ポイント」という単位の実体は以外と知られていません。多少の由来とともに「1ポイント=0.3514mmm」を覚えておくと、書式の設定に便利です。 |
ポイントは、さまざまな経緯で「1ポイント=0.3514mm」になりました。その端緒は1730年代のフランスまでさかのぼります。
当時普及していた活字を基準にフールニエが定めたポイント(1ポイント=0.3478mm)を経て、「1/72インチ」を基準にしたジドーによるポイント(1ポイント=0.3759mm)が考案されたと伝えられています。
0.3759mmを1/72インチとすると、1インチは約27.1mmとなり現代のインチ(25.4mm)とは異なります。これは「インチ」単位も国と時代によって変遷したためです。
ジドー式のポイントに対して、1880年代にアメリカの活字関係者により当時のタイプライタ活字の大きさの1/12を基準にしたアメリカ式ポイントが考案されました。これにより、一時は2種類のポイントが併存したとされています。
上記以外にもポイントの標準化にはさまざまな経緯があったとされますが、アメリカ式ポイントが標準となるまでの詳細は割愛します。
名 称 |
mm | インチ |
採用国 |
ジドー式ポイント | 0.3759mm | 0.0148インチ | ドイツ、フランス、スイス、スエーデンなど |
アメリカ式ポイント | 0.3514mm | 0.01837インチ | アメリカ、イギリス、日本、その他 |
日本には1890年代にアメリカ式ポイントが導入され、その後に日本工業規格(JIS)に定められました。したがって、1ポイント=0.3514mmであり、10ポイントは約3.5mmになります。
JIS Z 8305:1962「活字の基準寸法」 で「1ポイントは 0.3514mm とする」とされています。
なお、ワープロ文書あるいDTP(Desktop Publishing)では、 DTP ポイント(1ポイントを1/72インチとして1ポイント=約0.3527mm)が採用されています。
布川角左衛門 編集委員長:「出版事典」、出版ニュース社、1971 藤森善貢 著:「編集出版技術(第2版)上巻 エディター講座」、日本エディタースクール出版部、1978 |
10.5ポイントは、現代では使用例が少なくなった号数活字の名残りです。ワープロには、主に官公庁などの文書用として設定されています。
文字の大きさは7、8、9、10、11ポイントと1ポイントきざみか、12、14、16、18、・・など2ポイントきざみです。上記の理由から、この間に「10.5ポイント」があり、ワープロによっては標準(デフォルト)設定の場合があります。
号数活字は「初号」から「八号」まで9段階があり、五号(鯨尺の1分)を基尺にして倍率関係で各号の大きさが定められています。この「五号」がほぼ10.5ポイントであるため、便宜的に「五号」の置き換えとして10.5ポイントが設定されています。
「鯨尺の1分」とは、約37.88cmの1/100=約3.788mmになります。「1ポイント=0.3514mm」で換算すると、5号は10.78ポイントとなります。10.5ポイントはその近似値と言えます。
ちなみに「鯨尺」と「尺(いわゆる曲尺、約30.3cm)」では長さが異なります(鯨尺=1尺2寸5分)。尺貫法は、1959年(昭和34年)に廃止されています。
当然、現在では「鯨尺」を公用単位に使いません。また、号数活字の表記を使うことも、一部の活版組版で用いられる以外ほとんどありません。
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