適切な用字用語を統一して使うには、その「より所」が必要です。現代国語における用字用語のより所は、内閣から告示・訓令された「常用漢字表」であり「現代仮名遣い」、「送り仮名の付け方」さらには「外来語の表記」です。 |
ワープロの漢字変換を使えば簡単に漢字が使えます。だからといって、何もかも漢字にすればよいわけではありません。
ワープロで「ほとんど」と入力して漢字変換すると「殆ど」と変換されます。しかしこの「殆」は常用漢字表に採録された漢字ではありません(しかもなじみがある漢字ではありません)。
「あらかじめ」を漢字変換すると「予め」と表示されます。「予」は常用漢字表に採録された漢字です。ただし、「よ」とは読みますが「予め(あらかじめ)」は常用漢字表に採録された読みではありません。
漢字書き・ひらがな書きの使い分け以外にも、文書を作成する際、用字用語に関していくつか配慮しなければならない点があります。
常用漢字表以外の漢字や読みを使ってはいないか
(殆ど)→ほとんど、(予め)→あらかじめ
常用漢字表の漢字や読みであっても、ひらがな書きが適切なのか、漢字書きが適切なのか (一層)→いっそう、(-の様に)→-のように、(ついで)→次いで
送り仮名を統一して使っているか 行なう⇔行う、現われる⇔現れる
読みは同じだが意味を誤った使い方をしていないか 変わる
/代わる/替わる、関る/係る、形/型
外来語のカタカナ表記は適切か インターフェイス
/インタフェース、ディジタル/デジタル、オペレーティング・システム/オペレーティングシステム
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以下は、それぞれ使用する漢字、かな使い、送り仮名、外来語の表記の原則と基本的な用例をまとめた文書です。しかし、原則と基本的な用例だけでは実際の文章を書く際、慣用的に使っている用字用語と原則が合わず判断に迷う場合があります。
そこで上記の原則に沿って、官庁や役所で作成する公用文のための「公用文作成要領」、「用字用語例」 あるいは学術や報道分野など公共性の高い分野で使われる各種の用語集が作られています。
するとまた別の問題が生じます。たとえば、 「公用文と新聞の用字用語が異なる」あるいは「新聞と放送で用字用語が異なる」などです。
用字用語 |
より所(内閣告示・訓令) |
主 旨 |
使用する漢字 |
常用漢字表(平成22年) |
現代の国語を書き表すための漢字使用(および音訓使用)の目安(2,136字) |
かな使い |
現代仮名遣い(昭和61年) |
現代国語の口語文を書き表すための文体 |
送り仮名 |
送り仮名の付け方(昭和56年) |
一般の社会において国語を書き表すための送り仮名の付け方 |
外来語のカタカナ表記 |
外来語の表記(平成3年 内閣告示第二号) |
現代の国語を書き表すための「外来語の表記」のよりどころ |
内閣告示・訓令では「現代仮名遣い」と表記されていますが、当コーナーでは「かな使い」と表記します。
技術文書では「旧かな使い」が用いられる例はないため、当コーナーでは解説を割愛します。
分野によって用字用語がまちまちでは、文書を書く際に何を基準にすればよいのかさらにわからなくなってしまいます。文書を作成する際の用字用語のより所として「用字用語辞典」を使うことを薦めます。
「用字用語辞典」とは、「常用漢字表」、「現代仮名遣い」、「送り仮名の付け方」、「外来語の表記」を基盤に、公用文の用例集、用語集とともに学術用語集、新聞用語集、放送用語集など公共性が高い分野の用例を総括し、現代の国語の基準として推奨される用字用語の表記法と用例を示した冊子です。
用字用語辞典の多くは国語学者の方々が編さんに携わっています。用字用語辞典に示されている表記法には国語学的裏付けがあり、わかりやすい用例とともに実用的に構成されています。
また、表記法と用例だけでなく、常用漢字表にある漢字(あるいは読み)なのか、どの用語集ではどのような使い方がされているかなどまで示しされています。また、許容される使い方や例外も示されている用字用語辞典もあります。
「用字用語辞典」はいくつもの出版社から発行されています。発行年が新しく収録用語や用例が多い用字用語辞典を薦めます。また、技術者の皆さんには横書きの用字用語辞典が使いやすいと思います。
野村雅昭 編:「東京堂 用字用語辞典」、東京堂出版、1981 昭和56年の常用漢字表の告示に伴い、国語審議会の元委員らにより編纂された用字用語辞典です。 |
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