外来語のカタカナ表記の際に迷う事項に「複合語(二語以上の単語で一つの意味を構成する用語)をカタカナ書きした際にわかち書きの代わりに「・」(中点)を使うべきか否か」があります。 |
欧文(とくに英語)と横書きの日本語の大きな違いに「わかち書き」があります。「わかち書き」とは、文を書く際、語と語の間を離す書き方です。英語では語の間をわずかに空けて書きます。
たとえば、user interface を「ユーザインタフェース」としたり「ユーザ・インタフェース」とする例をよく見かけます。
「・」は一般に中点(なかてん)とよばれます。編集関係者の間では中黒(なかぐろ)とよぶ場合もあります。
「外来語の表記」(平成3年 内閣告示第二号)は、「慣用による」という両論併記の立場を示しています。
原語の発音またはつづり |
カタカナ表記 |
例 |
複合語であることを示すためのつなぎの符号 | それぞれの分野の慣用に従うものとして、ここでは取決めを行わない |
ケース バイ ケース、ケース・バイ・ケース、ケース-バイ−ケース マルコ・ポーロ、マルコ=ポーロ |
技術文書で外来語をカタカナ書きする際、欧文のわかち書きの代用に「・」を使う例は少なく、中点を使う必要ないと言えます。また、半角空けたり、ハイフン(-)をいれる必要性もありません。
「user interface」は「ユーザインタフェース」で差し支えないと思います。
技術文書の一部で外来語のカタカナ表記にわかち書きを使う例もごくまれにありませすが、一般的な習慣とまではなっていません。
中点を使うと、当該の語が用語として成熟していないあるいは中点が特別な意味をもっているような印象につながります。
「database」は「データベース」と表記するのが一般的ですが、1970年代では原語も「data base」と表記し、カタカナ表記でも一部の文書で「データ・ベース」とする例がありました。しかし、用語として“こなれる”ことで単語と認知され、以後は「database」であり「データベース」です。
「名詞と前置詞を組み合わせた用語」をカタカナ書きで表す際に中点を使う例外があります。
ネットワーク分野で使う「peer to peer」は「ピア・トゥ・ピア」としたほうがわかりやすくなります。「ケース・バイ・ケース」も同様です。
わかち書きの代用に中点を使うのは、「語が長くなると読みづらくなるため、区切りとして使いたい」というのが理由だと思います。
graphical user interfaceをカタカナ書きすると「グラフィカルユーザインタフェース」になり、「グラフィカル・ユーザ・インタフェース」にしたくなるのは理解できます。しかし、これを原則にしてしまうと外来語のカタカナ表記は“中点だらけ”になってしまいます。
機器、システムあるいは機能の名称に中点を付けすぎても読者に不自然な印象を与えてしまいます。一息で読める語ならば少々長く(15字程度)ても読者は理解できます。中点を使わない原則を薦めます。
中点を使わずかつ長い用語の印象を与えたくないならば、漢字を入れるのも一つの方法です。
たとえば、「ネットワーク・サーバ・オペレーティング・システム」とせず、「ネットワークサーバ用オペレーティングシステム」とできます。
ただし、不用意に略語にしない注意が必要です。略語を使う場合は、その略語が文書全体をとおして頻繁に出てくる場合に限るべきです。
graphical user interfaceを「グラフィカルユーザインタフェース」と表記する代わりに「GUI」とすれば簡便です。ただし、略記するということはそれだけ読者への情報を圧縮していることになります。
「サーバ用OS」と使う例にならって、「グラフィカルUI」としている例を見かけたこともあります。ただし、それが読者に認知されるかあるいは一般的に使われている表記なのか調べてから使うべきです。
また、語数で判断して何語以上の複合語は中点を付けるとか付けないという原則を適用する例も見かけますが、統一がとりづらく(複合語がさらに複合語化される場合など)避けるべきです。
外来語の表記(平成3年6月28日)内閣告示・内閣訓令 |
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