このコーナーのまとめとして「テキストファイル原稿」の編集について述べてみたいと思います。校正をはじめとした編集技術はもともと「手書き原稿」に対応して確立したものです。
しかし現在では、一部には手書き原稿もあるとはいえワープロやテキストエディタによるテキストファイル原稿が主体になってきています。すなわち、執筆者が入力した文書が基本的にはそのまま出版物に反映されるわけです。
テキストファイル原稿に誤りがなければ誤字誤植もなく校正の必要もないと思われがちです。その一方で、実際の編集製作では何度も赤字が入り修正を繰り返している現場をよく見かけます。
テキストファイル原稿を使っても原稿自体に誤りがあり、それを「原稿調整」や「校正」で適切に直すことができなければ誤字誤植が残ります。また、適切な校正工程を踏まないと組版体裁の悪い出版物(ディジタル文書を含め)が世に出てしまう可能性があります。
また、テキストファイルは単に文字情報の集まりであり「文字書式(書体・大きさ)」は付けられません。重要な用語をゴシック体にするなどは「原稿指定」をしなければなりません。
「手書き原稿時代」と「テキストファイル原稿時代」では、編集作業の“主体(注意しなければならないポイント)”は多少変わりつつあると思いますが、“本質(編集の基本)”まで変わるわけではありません。むしろ、「手書き原稿時代」に比べて現在ではこの本質が曖昧になりつつあると思われます。
たとえば、「原稿はできるだけ完成度を上げ、校正段階では文章の追加・入れ替えを避ける」のが編集の基本です。ところが、「手書き原稿時代」の活版組版や写植組版に比べて、DTP全盛の現在では校正時の修正は手間をあまりとりません。したがって、校正時の修正に対して執筆者もDTPオペレータもあまり抵抗感をもたなくなりました。
「修正に抵抗感がなくなる」というのは問題でもあります。校正段階で何度も修正するためかえって時間がかかり、ひいては誤りを残すことにつながります。修正作業の手間が減るのは印刷会社のみならず誰もが歓迎することですが、それによって誰もが「少々の修正は校正ですればよい」という気になってしまっては困ります。
この気のゆるみが「テキストファイル原稿時代」でも誤りが減らない(むしろ多くなっている)原因ではないでしょうか。筆者が編集者だった頃に現在のDTPの原型ともいうべき「電算写植」という組版方式が普及しました。これは入力データとレイアウトデータをフロッピディスクなどに保存し校正時に出力するシステムで、活版や写植のように手作業中心の修正をしなくてすむ画期的な組版方式でした。しかしそのとき、印刷会社の営業担当者から「電算写植でやりますから修正が多くてもかまいませんよ」といわれ強い違和感を感じたことを今でも記憶しています。
ワープロによる出版物の製作やインターネットにより、誰もが容易に情報を発信できるようになりました。これ自体はすばらしいことだと思います。
その一方で「校正」をはじめとした編集技術やテクニカルライティングのような実務文書の作成手法が一般に認知される機会が少ないため、出版物として必要な品質や体裁が伴っていない例も見かけるようになりました。
マニュアルをはじめとする実用文書を作成する立場にある執筆者や製作者は、出版物の最低限の品質や体裁についての配慮と知識が必要です。これらは、けして特別な知識でもプロの編集者だけの技術でもありません。むしろ誰しも知っておけばさまざまに役に立つことです。
残念なことにわが国の教育(義務教育、高等教育)では、「読む」こと「書く」ことを教えても、「文書を企画し編集する」について教えることはほとんどないと思います。ごく私的なあるいは身近な関係者に何かを伝える文書(たとえばプライベートなメール)は書けても、第三者に読んでもらう社会性のある文書を作ることが苦手な人が多い結果につながっているのではないかと考えます。
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