

マニュアルの文体
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先のセクションで述べたように、マニュアルでは「読者
=行為者(多くの場合はユーザ)」と位置付け、読者を「主たる視点」に置いて表すのが基本です。対して、執筆者は補足的な存在です。
また、一部のマニュアル(例:プログラム開発ガイド)を除いて、製品の動作は行為(多くの場合は操作)の結果として表すのが基本です。
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文体の分類
マニュアル(ここでは、主に取扱いマニュアルあるいは操作マニュアル)に用いられる文体は、主語を基準に3群ないし4群に分類できます。ここでの主語とは、「読者(あなた)」、「執筆者(私)」とともに「製品(本体もしくはその一部)」です。
繰り返しになりますが、「主たる視点」となるのは「読者」です。省略する人称は「あなた」に限るのが基本です。
マニュアルでは「(ユーザである)あなた」が主たる視点ですが、解説の方針を示す場合は「(執筆者は)・・・を解説します」と「補足的な視点」で述べる場合があります。また、メーカからユーザに勧告する際「(執筆者である私はメーカの立場として)・・・を推奨します」などと主語を省略して表す場合があります。ただし、「誰が」を明確にするために「当社は・・・を推奨します」と表すのが一般的です。

陥りやすい事例−「読者の視点」を欠いた文体・段落−
「読者の視点」の逆が、「執筆者の視点」あるいは「製品の視点(製品の動作が主体)」と言えます。執筆者あるいは製品が「主」では、読者はそこから「“自身にとっての”要点」を読解しなければなりません。
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機能仕様書の文末表現を多少変えただけともとれる事例を見かけます。見出し構成の考え方でも述べましたが、機能仕様書をベースにすること自体を不適当と指摘するつもりはありません。ただし、読者の視点に変換しなければ、マニュアルではなく“報告書風の製品仕様書”にすぎないとも言えます。
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また、「行動マニュアル」と銘打たれていても、経緯と目標とともに「行動指針(私たちは-する)」あるいは「行動規定(私たちは-と決める)」がほとんどの事例を見かけます。「何の場合に
は、行為者は何をする」が主体でなければ行動マニュアルとよぶには不十分と言えます。
マニュアル(manual)の語源は「手の」あるいは「手による」です。ここでの「手」は「読者の手(行動)」です。読者の視点で解説し読者の行動を表すのがマニュアルの基本です。

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