先に述べたように執筆者と製作者のギャップを埋めるのが原稿指定です。再確認すると「原稿指定」とは、「原稿データのプリントアウトに赤字などで執筆者の希望あるいは留意事項を書き込み、製作担当者に具体的に伝える」ことです。
要望や留意事項ばかりではなく、開発資料から引用した図でマニュアルに掲載するには細密すぎる場合には「細かくしなくてもよい」主旨のコメントを付けておけば製作者側の手間を省き、ひいては製作費を下げることにもつながります。
現在では「手書き原稿」を使うことはあまりありません。原稿の形態は、データファイルによる原稿が主流です。「データ原稿」を渡す際には「原稿指定付きのプリントアウト」を添付することを原則にしてください。これが製作担当者とうまく連携するポイントです。
ワードプロセッサやPDFファイルの機能を使えばデータ原稿中に原稿指定を埋め込むことも可能です。しかし、現実的な作業工程を考えるとプリントアウトに指定したほうが効率的です。できればさらに手間を省きたいところですが、この点は今後の課題です。
組版指定書を作り、原稿指定をした原稿と用語統一表をセットにして(テキストデータや図データを渡す場合はこれを添えて)製作担当者に渡せば完璧な入稿といえます。
もしかしたら出版社でもここまできちんとやっている例は少ないのではないかと思います。適切な入稿(原稿渡し)こそが円滑で誤りのない出版物作りの鉄則です。時間がなければ時間を作ってでもきちんとした入稿をすべきです。必ず後でその見返りがあるはずです。
原稿を渡す際には、必ず製作担当者に「見本組」を作ることを依頼してください。見本組とは本格的な組版(ページ製作)に入る前に代表的なページ(あるいはセクション)だけをサンプルとして組版し、執筆者と製作担当者で確認するための仮の校正刷です。これにより、入稿時ではわからなかったページの仕上がりイメージを具体的に確認できます。
この「見本組」を作らずに組版がかなり進んだ時点でレイアウト上の大きな変更をしたりするとたいへんな時間のロスとなります。また、費用のむだにもつながります。必ず見本組を確認し、レイアウトを確定するようにしてください。
見本組は正式な校正刷ではありませんから誤植をチェックする必要はありません。むしろ、文字(見出し、本文、注を含め)の書体や大きさ、行間などを読みやすさを確認してください。これらで直すべき点があれば本格的な組版に入る前に製作担当者に変更を伝えてください。
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