先に、再校校正の段階で「赤字合わせ」の後で「素読み」を行うと述べました。「素読み」は出版物としての最終確認を行う作業で二つの目的があります。
一つには、出版物としての体裁を確認すること
例:見出しなどの書式、見出し番号、図・表番号など各種の番号と通り、目次、索引のページ番号と本文との対応、など
もう一つには、読者や発行者に影響を与えるような重大な誤りがないか確認すること
例:数値、名称(とりわけ氏名、企業名、製品名などの固有名称)、日付および表記・表現(表記によっては法律に関わるもの)など
前者は「初校校正」で確認したことの再確認であり、後者は「原稿調整」で確認したことの再確認になります。
しかし、これらは原稿で確認したから、初校で確認したからといってそのままでよいとは限りません。編集・製作工程で思わぬ誤りや思い違いをしている場合もあります。最後に落ち着いてもう一度確認することを欠かしてはなりません。
たとえば、初校段階で目次のページ番号と本文との対応を確認したからといっても、その後何かの都合で本文のページが1ページ増える(あるいは減る)こともあります。そうなれば目次も索引もヘッダも再確認しなければなりません。
ワープロやDTPソフトでは上記のような確認を自動的に行う(例:索引ページの自動更新)機能もあります。確かに正確かもしれませんが、正しく更新したかどうかはなんらかの方法で確認する必要はあります。更新機能はあるが使うのを忘れていたという話を聞いたこともあります。どんなに自動化されても「ヒューマンエラー」を疑うことを忘れてはいけません。
体裁の確認にはチェックリストを使うのが効果的です。目次から始まって索引までを「行見出し」に、チェック事項を「列見出し」にするとよいでしょう。素読みをして確認したらそのたびに「済」とか日付を記入しておきます。
注意をしていだきたきたいのは、この「体裁と確認」と次に述べる「内容の確認」を同時に行わないことです。たとえば、見出しの確認をするときはそれだけを章を通して行うようにして他の確認はその後でします。
出版物には、誤っていると読者や発行者に重大な影響を与えるような内容が含まれています。たとえば、氏名、企業名、製品名などの固有名称の誤りはそれらに関わる人や企業の名誉を損なうことになります。また、数値や日付の誤りあるいは誤解を伴う表現は発行者の信用を損なうことになります。
もちろん出版物のどこが重要でどこが重要でないということはありません。現実的な問題として最終段階では誤りをおかす影響が大きい箇所についてはとくに慎重になる必要があります。素読みの段階ではもう後がありません。
これを避けるには、内容に対してしかるべき責任をもてる担当者が複数でチェックすることが必要です。これは分担して素読みを行うというのではなく、同じ校正をそれぞれ独自に素読みを行いそれぞれが万が一見落としをした際に補完するためです。
素読みする際には、必ず原稿や初校などを手元において少しでも疑問が生じたら、これらで確認したり、ときには原稿を疑うことも必要となります。
何度の同じことを述べるようですが、いかに原稿を完全に作り上げたつもりでも「ヒューマンエラー」はありえますし、編集・製作工程での思い違いによる誤りが最終段階まで残っていることもあるのです。
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